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Limit battle/2章~使命~

第31話~エントリー~


自宅を出て一般道をゆったりと走行している白いランエボ――

修(そういえば・・真にサーキットでのイベント出るか聞いたのに拒否しやがったな・・)

彼はそんな事を思いつつ小さくあくびをし、それを抑え込むように左手で口を覆う。

っと。修のランエボの後ろに1台のマシンが結構なスピードで追い付いてくる。

修「お・・速そうだな・・」

彼は乗る気は無かったので道を譲った。左のスペースに寄った・・

それを見てクラクションを鳴らして抜いていく赤い1台のマシン・・ランエボだった。

修「お!カッコいい!赤いのもスゲェ・・」

彼は声を出して言った。そのランエボは視界からすぐに消えた。

修「速かったな・・あ・・早く栄治さんの所へ行かないとな・・。」

車を急がせた――


EIJI SPEED

駐車場にはかなりの車が停まっていた。見るからに走り屋と言わんばかりのマシンでいっぱいだった。

修「おォ・・すげェな。」

周りのマシンに圧倒され辺りを見回す修はあのマシンを見つけた・・

修「おっ!?あれは・・さっきのランエボ!」

彼はそのランエボの横の駐車スペースが開いている事に気が付いてそこに自分のランエボを停めた。

修「・・うん!俺のランエボにこの人のランエボ!最高な絵になる!」

彼は自己満足をしていた。

赤いランエボはVOLTEXの08サイバーエボに似ていた。赤一色で、尚且つホイールはCE28Nのブロンズ!修には堪らない仕様だった。

???「どうだい?俺の車。気に入ってくれたみたいだね。」

この言葉にビックリして振り向くと、子供を肩車した金髪で左頬に小さめの刺青を入れた男がニコニコして立っていた。

左頬の刺青は多分左眼の近く傷を誤魔化す為の物だろう。


修「あ・・すみません!あまりにもカッコいいエボだった為・・」

???「いいよいいよ!好きなだけ見てよ。」

男はニコニコしながら言っていた。

???「そのランエボ・・君の?」

修「え・・あ。はい。」

???「このランエボも凄くいいよ!空力も良さそうだ・・地面に密着する感じとかどう?やばいでしょ!?」

修「えぇ!凄いです!」

2人は少し盛り上がっていった。

???「あ、自己紹介が遅れたね。俺は鏡野 劉輝。劉備の”劉”に輝くの”輝”だよ。」

修「俺は佳山 修です。"しゅう”は”おさむ”と書いて修と読ませます。」


鏡野「―所で、修。君もエントリーしに着たんでしょ?」

修「え?エントリー?」

鏡野「え?知らないの?ほら、今週のEIJI SPEEDとRfactory主催のイベント!コレはただの走行会とは違い、TAとか複数台のレースも

催されるみたいだよ。ライセンスも必要ないみたいだ。参加費用は2万円ちょっと。まー、高い様だが自由で且楽しそうなイベント

なら全然いいんだけどね。」

彼は肩に乗せている女の子を地面に下ろした。

鏡野「さ、真央。ママの所に行っておいで。パパはこのお兄ちゃんとお話してるから。」

彼の言葉を素直に聞き入れて大きく「うん!」と返事をしてランエボへ駆けて行く鏡野の娘、真央。

ランエボの中から1人の黒髪の女性が降りて来た。

修は少し頬を赤くして慌てて会釈をした。何故頬を赤くしたかと言うと自分のランエボから降りた後にしていた行動を全て見られて

いたからだ。


修「か・・可愛い娘さんですね。奥さんもお綺麗です。」

鏡野「だろ!?自慢の嫁さんと娘なんだ!見てみろ!真央のクリクリな目!ぷにぷになほっぺた!食べてしまいそうだァ!」

彼は真央に近づいて行くが、真央は笑いながら「キャー!」と言って鏡野の奥さんの周りをくるくる回っていた。

修(お・・親馬鹿過ぎる・・!)

真央を追い掛け回して少し息の切れた鏡野はハァハァ言いながらトレンチコートの胸ポケットからタバコの箱を取り出し、1本取り火を

付けた。それからタバコを吸って白い煙を吐いて言った。

鏡野「さ、エントリー行くか?俺もまだ済ませてないからな。君が参加してくれるのなら俺はより楽しくなると思うよ。」

彼は右手でタバコを持ったままニッコリと笑みを魅せる。

修「・・はい。では、エントリー行きますか。」

鏡野「よし!そう来なくっちゃ!」

彼は吸いかけのタバコを地面に落とし、靴で火を消す。

2人はEIJI SPEEDのショップの中へ入っていった。


第32話へ続く。



第32話~鏡野と秋川~


EIJI SPEEDのショップの中に入ってビックリした。受付には大勢の人が並んでいた。

修「凄い並んで居ますね・・。」

鏡野「皆今回の催しに参加するんだな・・ざっと見て30人近いな。」

2人は列の最後尾に並んだ―


しばらくしてやっと中間にまでなった。

修「長いですねぇ・・」

鏡野「今やっと半分だな。ま、辛抱しよう。」

2人が辛抱してまっていると、修に話しかけてくる声があった。

???「あれ?修君?」

修「ん?あれ?美雪?お前なんでここにいるんだ?」

彼に話掛けて来たのはなんと美雪であった。

美雪「修君ももしかしてこのイベントにエントリーしに着たの?」

修「あァ。そんな所だ。」

鏡野「お、修の彼女か?可愛いじゃん!俺は鏡野 劉輝。宜しくね。」

美雪「あ、綾川 美雪です。修君とはクラスメートです。宜しくお願いします。」

鏡野と挨拶を済ませ終わると

美雪「あ、じゃ私外に居るね。」

修「あぁ。」

彼女はそそくさと小走りで店を出て行った。

鏡野「いい子だったね。修!」

修「そんな事無いですって。」

そんな話をしてるうちに順番が回って来た。

鏡野「さ、修からでいいよ。」

修「すみません。」

彼はエントリー用紙にささっと詳細を書き始めた。

受付の女性は修の名前を見たとたん声をかけた。

受付嬢「あ、お客様。佳山様でございますね?」

修「え、あ・・そうですが。」

受付嬢「こちらのオーナーからの申しつけで佳山様のエントリー費は不要でございます。良かったですね。」

修「あ・・マジですか・・いいんですか?」

受付嬢「ええ。オーナーの高遠氏からそう言われて降りますので。あ、後奥の客間にご案内いたします。後ろに居る方は鏡野様

ですね?」

鏡野「そうです。」

受付嬢「鏡野様のエントリーはもう既にされて降ります。先ほど奥様から受けましたので。」

鏡野「まー。マジですか。解りました。」

受付嬢「それで、鏡野様も客間にご一緒お願いします。」

鏡野「了解。」

修のエントリーが完了し、受付嬢に案内されて奥の客間に案内された。

奥の客間では栄治が座って待っていた。その横の椅子にはRfactoryの拓哉も一緒だ。

栄治「良く来てくれたね!修!」

彼は立ち上がって修を出迎えた。

栄治「で、貴方が鏡野さんだね。宜しく。」

鏡野「宜しく。」

修「栄治さん。本当に参加費は払わなくていいんですか?」

栄治「あぁ。お前は特別俺が許した!」

いい加減なんだなこの人―っと思いつつ心を込めて頭を下げた。

鏡野「・・・あ。」

彼は部屋の隅に腕を組みながら鋭い目で睨んでいる青いタオルを巻いた男が居た。

???「お前は・・鏡野か。」

鏡野「げ・・秋川かよ。何でここにいんの!?」

男の名前は秋川 大和。

秋川「テメーとはGTやS耐意外で会うとはなぁ・・気分が最悪だぜ。」

鏡野「あぁ。俺もお前とは会いたくなかった。」

見るからに仲の悪そうな2人・・

修(GT・・S耐・・?)

栄治「まーまー、お二人さん。プロなんだから人間関係もプロらしくして!」

修「え!?鏡野さん!プロだったんですか!?」

鏡野「そだよ。言って無いっけ?」

修は言ってない!と言わんばかりに首を横に振った。

鏡野「俺もそうだが、コイツ・・秋川もそうなんだ。コイツとは結構因縁があってね。」

修「そうなんですか・・」

鏡野と秋川の言い合いが落ち着いた所で栄治が言う。

栄治「さ、君達3人にはある事を頼みたい。」

3人は首を傾げた。

栄治「俺と拓哉で何とか交渉で貸してもらったマシン・・サイバーエボとCT230R、そしてVARISのTAマシンを扱って欲しい!」

彼の一言で修は言葉を無くした。

鏡野「あー、OKOK。お安い御用だ。」

秋川「問題ない。」

修「え?え!?なんですかそれ!?」

栄治「秋川選手にはサイバーエボ、鏡野選手にはCT230R。そして修にはVARISのTAエボを使ってもらう。しかし、修は一応一般人。

だからイベント2日前から慣れて貰うようにして貰いたいから2日前にサーキットへ来て貰えないかな?ホテル代とかは出すから。」

彼の無茶苦茶な頼みが修の脳を襲う。

頭の中には”夢の様なマシンに乗れる”と”プレッシャー”で押し潰されそうになっていた。

修「え・・マジで俺なんかでいいんですか?」

栄治「あぁ。じゃなきゃ頼んでないからね。」

笑顔で答えた栄治。っと、そこへ拓哉が口を少し挟んだ。

拓哉「私共が乗り易いよう指導します。足回りとかも乗り易いようにしたいのですが、借り物なのでそうは行きません。

なので、2日で貴方に化け物マシンを操れるテクニックをお教えします。」


栄治「コイツの指導は解り易いし短時間で成果が出るんだぞ。ここは頼まれてくれ!」

修は悩んだ。


しばらく考えたあげく・・出た答えが――

修「はい。解りました。ご迷惑の掛からないよう頑張ってやらせていただきます!」

栄治「よし!ありがとう!」

話がここで終わった。


3人は店から外に出た。

鏡野「んー!修!本番は頑張ろう!」

彼は腕を上に伸ばしながら修に声を掛け、修の気持ちを解そうとした。

修「は・・はい。」

秋川「足を引っ張らないよう、車を壊さないよう頑張って足掻けよ。ノーマルヒューマン。」

彼はそのまま歩いて何処かへ消えて行った。

修と鏡野は自分達の愛車の所へと向い始めた。その途中、鏡野の奥さんと真央が居た。

鏡野「真央ちゃんー!!」

真央「キャー!」

2人の追いかけっこは始まった。修と鏡野の奥さんは「ははは」っと小さく笑った。


第33話へ続く。


第33話~赤と青のNSX~


EIJI SPEEDで受付を済ませた修。外に出たら鏡野は娘と遊び始めてしまって修はしばしばその遊びが終わるまでそれを見ていた。

修(はは・・鏡野さんも親馬鹿だなぁ。)

彼の前で鏡野は娘の真央に抱きついて真央の頬に口を当てて息を吹き掛け「ブブー!」っと音を鳴らす。

娘は楽しそうに奇声を上げている。それを見て奥さんも笑っている。

修(いい家族だな。)

っと、修に鏡野の奥さんが話しかけて来た。

奥さん「旦那がお世話になりました。私は真紀といいます。えーっと・・。」

修「佳山 修です。宜しくお願いします。」

真紀「修君ね。宜しく。」

2人は自己紹介をしていた頃、鏡野は娘を肩車して「ブーン!」と言いながら走っていた。娘もキャッキャいいながらはしゃぐ。

修「かなり娘さん思いのいいお父さんですね。劉輝さん。」

真紀「あの人は度が行き過ぎているからちょっと手の掛かるところが在るんだけど、娘の面倒見がいいからその所はいいんだけどね。」

修「確かに・・」

彼は苦笑いして鏡野の方を見た。すると、鏡野が手招きで修を呼んでいる。

修「はい?」

鏡野「修さ、今から一緒に峠行かない?昼間だけどさ。気分を転換しに!」

修「え、いいですけど。」

彼は少し首を傾げながら答えた。

鏡野「イベントの前に少しお前の腕を確認したいしな。」

娘を真紀に任せて鏡野は自分の愛車のランエボにもたれ掛かりタバコを吸い始める。

鏡野「ふー・・」

彼は空を見ながら白いタバコを吐きながら煙が消えるのを眺めている・・。

修「峠は・・何処の?」

鏡野「俺の地元は静岡だからな。有名な所で静岡峠、阿神峠、日本平、大崩って所かな。まぁEIJI SPEEDからだと阿神が近いから

阿神にするか。」

修「そうですね。そうしましょう。」

その答えに対して鏡野はニッと笑い「よし!なら早速行くか!」っと返答した。

修は「わかりました。」と言った後に自分のランエボに乗り込んでエンジンを掛けた。

鏡野「さぁ~!真央ちゃん!ママとブーブに乗ってね!」

娘に対してそう言った。真央は真紀と一緒に鏡野の赤いランエボに乗り込んだ。

2台の派手なランエボはEIJI SPEEDの駐車場を出た。



しばらく走り、目的の阿神峠に到着した2台のランエボ。峠を一気に駆け上がり頂上へ到達。

マシンを駐車場に入れ車から降りてくる修達。

鏡野「ん~!山の空気は最高だ!」

思いっ切り体を伸ばして解す鏡野。っと、真紀が娘を連れて車から降りてくる。

鏡野「真央ちゃん!どうだ?気持ちがいいだろう!山は!」

真央「うん!」

威勢のいい返事を返答した真央。

鏡野「んで、修。」

修「はい?」

鏡野「後ろから見させて貰ったが、お前は右コーナーに恐れがあるのか?」

この言葉にビクッとした修。何時の間にか走りを見られていた。

鏡野「まぁ、人間は自分の心臓がある方には強いが、無い方に関しては結構の恐怖心が生まれてくるものだがな。それを克服できて

初めて速い頂へ目指せるんだぜ。」

修「軽く流しただけなのにそれだけ見抜かれるなんて・・。」

鏡野「俺も昔はそんな事があったからな。結構克服するのに時間が掛かったからな。」

彼の言葉は結構真を突いていた。

鏡野「俺とお前は同じ匂いがする・・結構相性がいいかもな。俺はお前みたいな奴と一緒にレースをして表彰台に上がりたい・・。」

言葉に感情を乗せて修に言った。

―そういえば、浅田に言われたな・・~君ならまだ青いし走りもきっと伸びる~その言葉と鏡野の言葉に揺れた―

修「・・俺、このイベントで自分を探そうと思っていまして・・そこで答えが見つかれば・・ライセンスを取りに行こうと思います。」

その言葉―鏡野の中にかなり響いた。

鏡野「そうか・・楽しみにしてる。そうだな・・手っ取り早く俺と同じシートに着くならテストドライバーをして見るしかないな。

チーム監督に俺がお前を進めて見る。なぁに、費用もそれなりに掛かってしまうが関係ない。俺はお前と組みたいし・・俺に任せろ!」

彼は胸をドン!っと拳で叩いて修に入った―


っと、それと同時に物凄い爆音が駐車場内に響いた。

そこへ赤いNSXのNA1と青いNSXのNA2が一緒に駐車場へ入ってくる。

後に入って来た青いNSXは中途半端に停車した。

それぞれのマシンから出てきたのは長身の男2人だった。

NA2の男「おい、何故俺をこんな田舎へ呼んだ。交通費とか考えろ。」

NA1の男「ふん。様を済ませたらさっさと帰っても貰うさ。」

NA1の男はポケットからタバコの箱を取り出して1本取り出して口にくわえ、ジッポライターで火を着けた。

NA2の男「で、用件はなんだ?」

NA1の男「・・そろそろお前との長い戦いとも幕を下ろしたい。その為に最初俺の地元、そして最後にお前の地元で戦る。それで

2回勝てばそいつの勝ち・・そしてバトルは終いだ。」

NA2の男「ほぉ。いいだろう。で、今日はここでか。まだレースもないし・・体を温めておくには文句は無いな。よし、乗ってや

ろうか。」

NA2の男は右手をコートのポケットから出して拳を作ってNA1の男の方へ向けた。


鏡野「おー、アレは・・六条さんじゃねぇか?」

修「知ってるんですか?」

鏡野「あぁ。あいつもプロのレーシングドライバーだ。でも、あの赤髪の男は知らない。」

修「あの人もですか・・!」

彼は驚きながらまたNSXに乗った男達の方を向いた。

タバコを吸っているNA1の男は―

NA1の男「今はまだ昼だ。交通量の多いから夜10時にここへまた来い。」

NA2の男「・・わかった。」

NA2の男は車に乗ってそのまま峠を下っていった。

まだ頂上に残っているNA1の男は吸いかけのタバコをアスファルトの上に落とし靴で踏みつけて火を消した。

すると、男は修達の方へ歩いてくる。

NA1の男「・・・ん?」

男は修を見て反応した。

NA1の男「お前・・修じゃないのか?」

修「え?そうですが・・」

NA1の男の正体とは・・!?


第34話へ続く。


第34話~ZERO~


修達の方へ歩いて来たNA1の男は修に声を掛けてきた。行き成り声を掛けられて来た為、修は困った表情を見せる。

NA1の男「・・覚えてないか?昔は良く遊んだのにな。」

男はフッと鼻で笑った。

修「・・あ!淳兄さん!?」

NA1の男はようやく思い出したかの様に口に笑窪を作った。

修「そうか・・ここ2年会ってなかったから思い出せなかったよ!」

NA1の男の名前は佳山 淳。修と陽介の従兄弟に当る存在。

淳「酷いな。忘れるなよ。」

修「ごめんごめん!」

と、淳が鏡野の事に気が付いた。

淳「・・こちらの方達は?」

修「あ・・こちらは・・」

彼が言おうとした所に鏡野が左手で修の口を押さえ込んで自分から名乗り出た。

鏡野「俺は鏡野 劉輝。こっちは妻の真紀で、こっちが娘の真央だ。宜しく頼むよ。」

淳「あぁ。宜しく。」

2人が紹介を終えると淳は―

淳「じゃ、悪いが俺はそろそろ時間だ。帰らせてもらう。」

修「え?仕事?」

淳「いや、そうじゃない。まー、大人の事情だ。」

修「そーかい!まぁいいや。またな!」

そう言って淳は自分のNSXに乗って走り去っていった。


鏡野「そうか。アイツはお前の従兄弟か。」

修が鏡野に淳の事を説明して話を終えた。

鏡野「所で、修はこれからどうするんだ?」

修「そうですね・・夜になれば友達がここに来ると思うんで、その時間まで何処かで時間潰そうかなぁって思ってます。」

鏡野「そうか。んじゃ俺等も付き合うよ。今週末まで由比に居るしさ。この辺のホテル予約してあるし。」

修「そうなんですか!じゃ、今夜ここで淳兄さんとあの六条って人のバトル見ましょうよ!?」

鏡野「いいね!俺もそのバトルは気になってたし!あの六条に何処まで着いていけるかっ!」

2人だけで盛り上がっていた所に真紀が口を挟んだ。

真紀「それじゃ、その時間の時は私は真央とホテルで待ってるからね。楽しんで来てね。」

鏡野「え?何言ってるの?真紀も真央も行くんだよ!真央は車の中で寝てればいいし。久々の家族団欒を満喫しようよ!」

えーっと言う顔をしながら鏡野を見ている真紀。

鏡野「真央ちゃんはパパと一緒に居たいもんねぇー?」

真央「うーうん、別にー!」

頭の中から崩れる様な音が聞えそうな感じに脱力した鏡野。

修と真紀は笑いを堪えるのに必死だった。

鏡野「こらぁ!真央ちゃん!!」

真央「キャー!」

またこの親子の追っかけ合いが始まった――


5分くらいの追いかけ合いが終了し、ハァハァいいながら真央を肩車して戻って来た。

鏡野「ふぃー・・疲れる・・」

修「ハハ・・お疲れ様です。」

真央を真紀の所に連れて行って真央から少し離れた所でタバコに火を付けた―


その後、鏡野がタバコを吸い終わった後に御一行は峠を下って近くのファミレスへと向った――


第35話へ続く。


第35話~―アリスト―~


阿神峠を下って数分の所のファミレスで暇を潰している修と鏡野一家。

鏡野「あ~ぁ。溢しちゃったねぇ~いいよー。真央ちゃん汚れなかったかなぁ?って!あー!スカートが!」

真紀「拭けばいいじゃない。」

彼女はスッと鏡野にウェットティッシュを渡す。

鏡野「お、サンキュゥ!」

彼は真央のスカートについたミートボールの汚れを渡されたウェットティッシュで拭いて綺麗にした。

修(いい家族だな・・ちょっと大黒柱の鏡野さんが頼りなさそうだが・・。)

そう思いつつハハッと笑いながらエスプレッソを口に運ぶ。


しばらくファミレスで時間が潰せた修達はまた阿神へと戻った。

その時の時間は午後6時半を回っていた。

頂上のPAまで戻ってきた時には6時40分になっていた。


2台のランエボが頂上のPAに到着。

修「あれ・・あのNSX・・」

先に青いNA2・・そう、六条は先にもう着いていた。

修は六条のNA2より2個駐車スペースを空けて車を停めた。鏡野もそれに合わせて停車。

六条(・・・アレは鏡野か。さっきもいた気がしたが・・)

彼は少し修達の方を見ていたがすぐに麓の方へ目を向けながらタバコを吸い始める。

っと、鏡野が車から降りて来て六条の方へ寄って来る。

鏡野「よう。元気だったか?今シーズンも頑張ろうぜ!」

六条「・・・フン、鈍い300のドライバー。精々500の邪魔にならない様に頑張れよ・・ハッハッハ!」

彼はタバコを指で挟んで落とさない様にして笑い出した。

鏡野「・・あぁ、頑張るよ!表彰台目指すぜ!」

六条「まぁ、お前には出来ないだろうが・・その針の糸と押し位の隙間しかない勝利と言う物を掴んだら俺が称えてやるよ。」

彼は”ハイハイ”と言わんばかりにウザッたそうに手をヒラヒラと振るう。


――丁度その時、一台の峠を駆け上がってくるサウンドが聞えて来る。

六条「・・今回のターゲットの登場だ。」

修はそのマシンの来る方へ首を向ける。

すると、そこに見えるのは4つ目のヘッドライト。V8エンジンの音もする。

修はてっきり淳のNA1とばかり思っていた為、少しため息をしたが、その車を良く見ると、ある事を思い出した。

修(ま・・まさか・・!)

そのヘッドライトの車が等々姿を現した。

―メタリックブラックのアリストだ。エアサスで車高をかなり下げた仕様で車中に積んでいるのかウーハーの大きな音が

車外に漏れている。

修(アイツ・・?アイツはバンパーボロボロじゃないっけかな・・いや・・変えた可能性もあるが・・?)

そう、修の言っている事は当っていた。アリストは駐車場に停まり、中から例の男が出てきた。

修(やっぱりか!)

彼は顔色を変えた。

鏡野「へぇ・・アリストか。ガンガンのVIP仕様だな。」

っと、チラッと修の方を見た鏡野。修の様子が少し可笑しかった。

鏡野「修・・?どうした?」

ハッと気が付いた修は鏡野に「いえ、何でもないです・・。」と少し動揺した声で言った。

すると、アリストの男も修に気が付いた。

アリストの男「フッフッフ。お前さんも懲りずにまだ走り屋続けてんのか?アレだけ捻り潰してやったのに・・ッフッフ。」

男は奇妙な笑いをして修を細い目で見る。

修「アンタに壊されたS13・・その後使い物にならなくなりました。」

アリストの男「だろうな。そうなるようになったんだから。」

修「ふざけんなよ!?アンタ死ぬかも知れない事をしたんだぞ!?」

アリストの男「フッフッフ。死んだら何?俺じゃねぇもん。」

彼はポケットからタバコの箱を出して1本取り出して吸い始めた。

アリストの男「そうだな。生き残ってたなら名前くらいは教えといてやるよ。俺は高林 アギトだ。お前は?」

修「俺は佳山 修。アンタに再戦を申し込みたい。」

彼の再戦の依頼にアギトは少々驚いた。

アギト「ほぉ・・負けず嫌いはいい事だ。しかし、また車が死ぬぜ?フッフッフ。」

修「それは無しにしろ。その代わり、負ければ好きな物をくれてやる!逆にお前が負けたら今まで車を壊して来た人達

に謝って、警察に自首しろ!」

アギト「あーあー。いいよいいよ。お望み通り。」

彼はタバコの吸い掛けを地面に捨てて修の方へ向かって凄い速さで回し蹴りを入れ込む!

バシッ!

PA内に大きな音が鳴る。


第36話へ続く。


第36話~復讐~


アギトは回し蹴りを繰り出し、PA内に大きな衝撃音が響く。

修「・・!」

???「大人げないな・・」

一人の男の声――

アギト「・・ほぉ。このスピードの回し蹴りに追い付くとはな・・」

彼の回し蹴りを受け止めた男が言った―

???「勝敗は正々堂々と車で決めやがれ。」

修「・・淳・・兄さん!?」

そう、修を庇いアギトの回し蹴りを受けたのは淳であった。

淳は回し蹴りをモロに腹筋に喰らった――

修「大丈夫!淳兄さん!?」

淳「なぁに・・心配は要らないさ。俺は鍛えてるからな。」

彼は平気な顔で修の前に立ち言った。

アギト「ッフッフッフ・・まぁいい。さっさとやるか。」

男は自分のアリストに乗ってスタート位置に着いた。

淳「気を付けろよ・・陽介に聞いたがアイツは確かお前を前に事故らせた奴だろ?またやらないとは限らない。しかも、

なぜか雲行きも怪しくなってきたからな・・」

修「あぁ。解ってる。もう同じヘマはしない・・!」

彼は深呼吸してゆっくりとランエボに乗り込んで行く。


アギト「ッフッフッフ・・逃げるなら今のうちだぞ・・?」

修「逃げない。絶対・・アンタこそ今日こそピリオドだ!」

2人は車の中で睨み合いながらスタートを待つ――


六条「面白そうだな・・俺がスターターやってやるよ。」

淳「あぁ。頼む。」

六条がスタート位置に着いた。


六条「んじゃ・・スタート5秒前!」

彼はタバコを手に持ってカウントを開始した!

六条「5!4!」

カウントに合わせてアクセルを煽る黒いアリスト・・

六条「3!2!」

修(・・落ち着け・・絶対負けるわけには行かない・・んだ!)

六条「1!GO!!」

スタート合図と同時にタバコを空高く投げる六条!それと同時にスタートする2台!

パワーの差でアギトのアリストが先行する。

修「っく・・!早い・・!」

スタートでどんどん離れていくアリスト――

ランエボのスピードでアリストに付いて行くのは結構キツかった。

修「っく!そろそろヘアピンに入る・・そこで食いつけるか・・!」

2台はヘアピンに入る。

アギト「ッフッフッフ・・」

すると、ヘアピンで異様に減速するアリスト!

修「な!?なんでこんな所で・・!!」

アリストをかわす為に大きくアウト側に膨らむ修のランエボ。

アギト「ッフッフッフ・・まだまだ・・。」

アリストはアウトに膨らんだランエボが通るはずのラインを前に出て潰す!

修「うわぁ!」

勢いの付いていたランエボを急いでぶつけない様にブレーキを掛ける!

修「デタラメな走りをしやがって・・!」

ちょっとしたストレートでまた離れて行くアリスト・・次の右ヘアピンでまた同様に深くブレーキを踏み込むアギト!

アギト「ッフッフッフ・・焦れ焦れ・・。」

ランエボはまたアウトに膨らむ・・

修「グッ・・!なんなんだよ・・コイツ・・!真剣に走る気はあるのか!?」

が、今度はタッチの差でノーズがアリストよりも前に出る!

アギト「おぉ・・やるな・・んじゃ、先に行きな。」

次の左ヘアピンで修が前に出る。アリストはワザとらしくブレーキで後ろに付く。

修(・・ホントに何を考えてやがる・・?)


ヘアピンを抜けて長めのストレートへ入る2台・・すると・・それと同時にポツリポツリと雨が降って来た――


第37話へ続く。


第37話~終わりは何時もそう~


2台の猛烈なエキゾーストと共に雨の激しさもいっそう激しくなりザザッーと聞えるほど・・

アギト「・・雨か・・ヤベェ・・」

超重量級のアリストはスリップすればお陀仏の可能性が高いためさっきの様な走りは徐々に衰えてきた。

修(・・占めた!アイツは雨だからペースダウンしたんだ・・!)

アリストに比べ超軽量化し、空力も優れたランエボはまさに水を得た魚。修は先ほどから崩されていたペースを整え始めた。

アギト「ッフッフッフ・・クカカカ!!面白い!こいやぁ!!」

2台は1セクを終えて2セクの始めに入る。そして2台は橋に――

修(ここだ・・前奴にやられた所・・!)

トラウマを押し殺しながら先行のアリストを追走する修。

アギト「っく・・滑るな・・」

橋の繋ぎ目で滑ってスライドしながらコーナーをクリアするアリスト・・この重いマシンをスピンさせずにドリフト

コントロールしながら立て直すアギトはかなりの腕である事をここで初めて修は知る。

修「アイツ・・ひょっとしたらスゲェ走り上手いんじゃないのか・・」

ランエボはアリストと違いAWDでややスライド気味だがグリップでクリア。

橋をクリアした時にランエボはアリストの後ろに居た―

アギト「やりよる・・」

っとバックミラーを見て余所見をしていた瞬間・・雨と枯葉がアリストのタイヤに滑り込んできた!

アギト「ッ――!!」

アリストはコントロールを失いランエボの前で散らかる―

修「ッ!」

彼は急にスピンしだしたアリストをかわす為にブレーキを踏んだ!

―が、その選択は間違えだった!

逆に滑り右コーナーに侵入するはずのフロントがアンダーになりアリストの方へ向う!

修「な・・!しくった!」

アリストはその時、スピンしたままリアから木に突き刺さった!

アギト「ッグ・・!」

反動で体が前に押し出され頭をハンドルにぶつけるアギト

修(停まれェ!!!)

ステアとブレーキで必死に車を停めようとする修。

ランエボはアリストのフロントバンパーに左カナードをぶつけて停まった。

修に怪我は無かった――


雨の中の死闘は無残な結末で幕を閉じた――


修は車から出てアギトの方へ向った。

修「大丈夫か・・!」

アリストのドアが勢い良く開く。足で蹴って開けたらしい。

アギト「・・糞車め・・何散らかってやがる!」

っと、今度は車の左フェンダーに蹴りを何度も入れるアギト。雨の五月蝿い中でもマシンを傷つける音が響く―

アギト「ハァ・・ハァ・・っふ・・ふははは!!」

修「!?」

ビックリして体を振るわせる修。

アギト「ふははは・・で・・?俺を警察に送りつけるんだったな?」

修「あ・・あぁ。」

アギト「さぁ・・逃げやしねぇ・・さっさと連絡しやがれ。筋通してやらぁ。」

彼はポケットからタバコを取り出し吸い始めた。

修はアギトの言う通り110を携帯で掛けた―


しばらくして警察のサイレンの音が聞えてくる。

アギト「来たな・・最後にお前に言っておいてやるよ。」

修「・・なんだ・・?」

アギト「・・お前は何時までたっても俺の圧力からは逃げられないからな。」

彼がそう言い放ったと同時に赤いサイレンの光が修達の目に飛び込む。

パトカーが来た・・が、普通とは違うパトカーだった。

黒のR32、覆面だ。

覆面パトカーの中から2人降りて来た。

警察「連絡を受けて来ました。コイツですか?」

修「え・・えぇ。」

と、結構偉そうな警察が言う。

???「ほぉ。お前高林総会に居た奴か。」

アギト「よぉー。あんちゃんまたあったな。」

???「・・明津。手錠。」

明津と呼ばれたのは先ほどの警察官だ。

明津「アイアイ。」

彼はアギトの両腕を後ろに持ってきて手錠を嵌める。

明津「隊長。完了です。」

隊長「わかった。じゃ、連行する。」

アギト「っふっふっふ・・ざまーねー。」

彼は明津に連れて行かれR32の後部座席に座る。

隊長「じゃ。コイツを連行する。雨だ。風邪引くなよ~。」

彼は友好的に挨拶をして車に乗り峠を下っていった――


第38話へ続く


第38話~2台のNSX~


アギトを連行している覆面パトカーの中――

隊長「全く・・お前何人被害者出したと思ってる?」

アギト「知るか。特になること意外覚えてる柄じゃねーんだわ。」

足を組みながら手錠に繋がった手で頭をかきながら答えた。

明津「お前真剣に答えろよ!」

隊長「いいっていいって。どうせ後で聞くんだし。」

明津「そっすねェ。」

隊長「それにしても・・高速道路を見てたのに行き成りこの雨の中峠って・・だるいぜェ。」


その後署の方に連行された―


修「・・ふゥ。」

彼はマシンから取れたカナードを助手席に置いて頂上へ戻った。

淳「どうだった?カナードが取れているが・・。」

彼はランエボのフロントを見て言った。

修「俺の勝ちだよ。この雨であの巨体を操作出来る訳が無くそのままドカンだった。」

淳「そうか・・それならいいが―」

彼がその後何かを言おうとしたが、そこに口を挟む六条―

六条「そんな人間の出来損ないの事なんか放って置け。それより・・早くバトルを始めるぞ。」

周りの人達は彼の言葉に対してザワ付き始めた。

雨の中、MRのNSX2台でのバトルを行うと言うからであった。勿論、それはかなりの腕のドライバーではなくては出来ない芸当。

淳「そうだな。さっさと終わらせるか。」

その言葉でも周りはザワ付いた。否定すると思いきや、否定する所か口を歪めてニッと笑いながら言っていたからだ。

六条「よぉし。バトルは簡単。ヨーイドンでスタートして先に麓に着いたほうの勝ちだ。」

淳「いいだろう。スターターは・・そこの赤いエボ・・鏡野だったな。頼む。」

鏡野「おう、ガッテン!」


2台のNSXが土砂降りの雨の中スタートラインに並べられた。

鏡野「準備はいいか!?良ければヘッドライトでパッシングを!」

彼の掛け声と共に2台のNSXはヘッドライトを光らせる。

鏡野「スタート5!」

カウントが始まった。

鏡野「4!3!」

NSXのアイドリング音と共に土砂降りの雨の轟音が聞える―

鏡野「2!1!」

修は真紀と真央を車の中に入れて外でスタートを待った。

鏡野「GOOOO!!!」

今、鏡野の声と共にNSXのバトルが始まった!

最初に先行を取ったのは赤いNSX・・淳のNSXだった。

淳(悪いがもう前には行かせない。)

NA2もリアにビッタリくっ付いて離れない。

六条(フン・・貴様を今からどう料理してやろうか・・考えるのが楽しみだぜ・・。)

2台ともスタートしてすぐに孕む。すぐに連続ヘアピンを前にする。

淳(ほぉほぉ・・久しぶりに攻める阿神は雨でしかも行き成りコイツが相手か・・面白いなぁ・・)

と言いつつ、NSXは雨の中横を向くっ!

六条「ッハ!舐めるなよっと!」

青いNSXも続いて横を向く!赤と青の2台のNSXはツインドリフトでコーナーを抜ける!

次のヘアピンも・・そのまた次のヘアピンも同様にツインドリフトでクリア!

淳(・・コイツとは決まって何時もこの様な始まり方だな・・)

ハンドルを逆に切って振り替えしをする!

六条「・・・へぇ。」

彼はまた普通の顔で振り替えしを余裕綽々で決める。

ギャラリーは勿論の事「スゲェ!」っと声を上げる。

連続ヘアピンをクリアした2台。ストレートで後ろのNA2がNA1の横へ並びかける!

淳(ッ!?ここで!?)

NA2の方をチラッと向く淳。そこには同じ様に淳の方を向いている六条がうっすら見えた。

六条「フッハハハ!焦ってる焦ってる!面白くなってきた!」

前を向き直して手に力を入れ直し、次のコーナーへ!

同じタイミングでブレーキを踏み2台!

この孕みの結果、ブレーキで前に出るのはッ――!


第39話へ続く。


第39話~必然~


ブレーキ勝負でNA2の鼻先がNA1より前に出る。ブレーキで勝ったのは六条だ。

淳「・・・」

連続ヘアピンを抜けた後のコーナーでNA2はNA1の前に出る!

六条「・・・あっけない。」

コーナーを抜けた後、NA2の後ろにNA1はまだ確りくっ付いている。

淳「やるな・・」

少し口を歪めニヤける淳――


その頃、麓コンビ二PA―

駐車場には水色のS2000それと黒のR34・・そして白のスープラが停まっている。

そのドライバー3人は全員男・・スープラの男の横には女性が一人。

S2000の男「―っでさ!ズザーッ!て言ってズドドドッ!ってキャタピラーが・・」

R34の男「はいはい。もう戦車の話はいいですから。今日は何の為に集まったか覚えてます?」

スープラの男「そうだよ。今日は例のあの子を鍛える為、その日時と場所を伝えに来たんでしょ?」

S2000の男「おっと・・そうだった・・で?その”修”君は?」

R34の男「もう来てるらしいですよ。頂上だそうだ。栄治さんからの情報ー」

スープラの男「今はバトル中だから後で行くとしようか。」

2人の男は同意してバトル終了を待った――


バトルは大詰めになっていた。

2台はもう残り4コーナーと2ストレートになっていた。

淳「・・そろそろいくかぁ―」

NA1はピッタリ喰い付いていたNA2の横へストレートであっさりと出る!

六条「な・・なんだと・・!?」

少しビックリしたがすぐに冷静を取り戻して並びながらコーナーへ侵入する!

しかし、2台ともまた同じ所でブレーキ!

ツインドリフトしながら左コーナーをクリア!

六条「・・ッ!?また!?」

コーナーを出た後にまたNA2が前。

淳「・・・」

そして、残り3コーナー・・2個目のコーナー!

またしてもツインドリフト!が、また出口で六条のNA2が前を!

そして最後の2コーナーは連続ヘアピン!


すると!ちょっとしたストレートで淳が動いた!

六条「・・馬鹿な・・!」

ここでNA2の横に並びかける淳!全くもって雨が降ってるのもお構い無しの突っ込み!

六条「馬鹿が・・・スピンするぞ・・!」

っと、ヘアピンの前でNA2の方が先にブレーキランプが光る!

六条「げ・・減速しねぇ!?」

淳は連続ヘアピンの最初のコーナーが緩い事を使い滑りながら進入!

淳「これが・・お前の走りを見て見抜いた弱点。雨のヘアピンでは多少のスピードの差でスピン、または事故へ繋がりかねない。

プロのお前はその事を良く知っている。そのせいで慎重になり過ぎるからそこがウィークポイントだ。」

NA1はリアバンパーをガードレールギリギリに通す!

六条「・・アイツには雨の恐怖は無いのか・・てか・・むしろ神経があるのか!?」

淳のNA1が六条のNA2に車1台分のスペースを空けて完全勝利。弱点見つけ出して見事勝利を挙げた。


NSX2台が降りて来て「スゲーな」と言いながら雨に打たれている先ほどの3人・・

この3人は修に何かをするみたいだったが――一体!?


第40話へ続く。


第40話~DESTNY終結~


六条「ッく!!どうしてだ!?」

荒々しく声を出し、地面を大きく踏み込む六条・・それを見て淳は―

淳「嘆くな・・見苦しいだけだぞ。天下の六条 雄輝。」

六条「―ッ!!」

淳「全く・・少しは大人になれ。負けは負けだ。どうして負けたかはわかっているな?」

六条「・・あぁ。」

語尾を強くして鋭い目付きで淳を睨んだ。

淳「その事は深く追求はしない。負けの理由はお前自信が良く知っているはずだからな。」

彼はかけていたメガネを外して少し青い眼を六条に向ける。

六条「・・ジェーンの言う事に意義は無い・・だが、次は負けねぇ!次の勝負は来月。漣峠でやる。いいな?」

淳「あぁ。」

六条は淳の事をジェーンと呼んだ。淳の母親はイギリス人で幼い頃はイギリスで暮らしていた為もう一つの名・・

ジェーン・フライス。六条はその頃淳と同じイギリスの学校に通っていた為その名前で呼んでいる。

六条「じゃぁな。」

彼はおもむろに淳を何度か見た後に自分の車に乗るって帰って行く。


――バトルを終えたのを確認してコンビ二の前に居る男達は目を合わせて車に乗る。そして頂上を目指す。


頂上―

修「ハァ・・」

鏡野「そうしょげるな。カナードならすぐに直せるだろ?」

修「そうなんですが・・何かあんなに追っていた相手がアッサリ捕まると何か・・気分が・・」

鏡野「ハハハッ!いい事だよ。その黒かった思いはもう消えたんだよ。だから、これからはなんも気にする事は無い。

自分の思った通りに人生を歩めばいい。」

修に励ましの言葉を掛ける鏡野――


真紀「ねぇ?下から車が上がってくる音がしない?」

鏡野「・・あ。ホントだな。」

修「・・・??」

正体不明のマシンが上がって来るのを少し不思議に思いながらも待つ――


すぐに現れた3台のマシン。雨の中かなり威圧感のある3台だった・・水色のS2000を戦闘にスープラ・・R34と続いている。

マシンはそれぞれ駐車場に停車し中から人が降りてくる。

S2000の男「やぁ・・えーっと・・そのランエボ・・君が修君か?」

修「え・・あ・・そうですが・・貴方達は?」

S2000の男「俺達は君も知っていると思うが”DESTNY”のメンバー。俺は山本 勝也。宜しく。」

スープラの男「僕は臼井 葵。どうか宜しく。」

R34の男「俺は高田 優。アンタ知ってるでしょ?俺の姉貴の事。」

修「君の・・お姉さん?高田・・高田・・あぁ!由美さん!」

優「そうそう!アンタの事絶賛でさぁ!」

修「へぇ!それは嬉しいな。」

少し照れる修―

そして、修に言う勝也

勝也「今日は君に言う事があってさ。」

修「なんでしょう?」

勝也「君も知っていると思うが、栄治からの伝言だ。まだ大学の冬休みの間・・そう、来週のイベントの為に特訓・・だそ

うだ。」

修「特・・訓?」

葵「うん。佳山君にね。場所は箱根峠。僕は勿論、DESTNYのメンバー全員のテクニックを注ぎ込むつもりだよ。」

修「DESTNYの・・皆さんのテクニックを・・!?」

優「そう。俺は一応アンタより年下だけど立派に一つのチームリーダーとしてやっているし、DESTNYに選ばれたのだから

それほどの腕はあるという事。宜しく頼むよ。」

この男達の発言に修はある気持ちを心の中で出していた。

修(スゲェ・・じゃぁ・・じゃぁ・・このスゲェ人達のテクニックをコピーするチャンスなんじゃ・・!)

勝也「DESTNY全員だ。全員。だから、あの”雅道”も来るぜ。」

その雅道に近くで聞いていた鏡野が反応する。

鏡野「何!?雅道!?DESTNYのメンバーって事は・・あのF1ドライバーの!?」

勝也「あ・・あぁ。そうだが貴方は?」

鏡野「俺か?俺はSUPERGTのドライバーの鏡野 劉輝だ。」

勝也「マジ!?あの!スゲェ!」

凄くはしゃぐ勝也

勝也「去年のレース!富士のヘアピンの立ち上がり!ググッ!て立ち上がった所なんか痺れたんだよ!」

葵「はいはい。じゃぁ。今日はこの辺でお暇するね。」

そういって彼等は個人個人の車に乗り込んで行った―

箱根での特訓ッ―

待ち受けるのは!?


第41話へ続く。


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